パナマ運河の通航制限の流れと今後について

パナマの通航制限はいつまで続く?

パナマ運河庁の発表によると、記録的な干ばつによる水不足のため、2023年7月以降、パナマ運河の通行船舶数が制限されています。

もともとパナマ運河の水位調節は近郊にあるガトゥン湖から水を引いて行っていましたが、2023年にガトゥン湖の水位が著しく下がったため、通航許可船舶数の制限を余儀なくされました。 なお、運河の水位調整を海水で行うという案もありますが、海水では設備が錆びるなどの問題があり、大規模な改修が必要になる模様です。

ちなみに、パナマは11月から翌年の5月までが乾季、5月から10月までが雨季となるため、通行制限があっても雨季になれば緩和されることが予想されます。

今回は報道されているニュースを参考に、2023年秋から2024年7月までの通行制限された船舶数をまとめ、今後について予想したいと考えています。

2023年7月以降のパナマ運河の通航制限数について

以下、報道されているパナマ運河の通航制限について、隻数に焦点をあててリストにしてみます。

日付パナマ運河庁が発表した通航制限概要備考
2023 年7月30日7月30日以降32隻に削減これまでは1日平均38〜40隻程度
2023 年8月24日通航制限は10ヶ月延長すると示唆延長の理由:記録的な干ばつのため
2023年10月30日さらなる通航制限をすると発表
※11月2日までは32隻
※11月3日から6日まで25隻
※11月6日から30日までは24隻
※12月中は22隻
※2月は18隻
2024年1月17日当面の通航許可船舶数を24隻と発表※当初発表の18隻よりは緩和
2024年3月11日3月11日以降、段階的に通航許可船舶数を27隻と発表
2024年4月16日4月16日以降、段階的に27隻→32隻にすると発表
※5月7日~15日 はメンテ期間で24隻
※5月17日以降31隻
※6月以降に32隻
雨季になり水位確保の目処がたった模様。
2024年5月30日6月1日から1日あたり32隻と発表
2024年6月12日7月11日から1日あたり33隻、7月22日からは34隻と発表
2024年6月28日8月5日から1日あたり35隻と発表
2024年7月9日水不足対策として新貯水池の建設の許可が得られる見通しだと発表。(但し、完成は6年後)

上記のリストを見ると、パナマ運河庁が当初発表していた「2月は18隻」という制限は緩和されたものの、乾季の間は通常1日38隻程度の通航隻数が24隻と制限されていたため、運河の入り口はかなりの混雑だったと考えられます。

そして、5月の雨季に入り、制限は緩和され6月以降は32隻に増加、7月、8月も段階的に制限は緩和していくと発表されています。今後の降雨量次第では、制限撤廃も視野に入りそうです。

なお、当初は通航制限の期間で減収すると予想されていたパナマ運河の収支については、実際は増収だったようで、通航料の上昇などによって、2023年10月から2024年9月の期間は過去最高の収益となるのではないかと報道されています。そのため、通航制限自体はしばらく続けられる可能性もありそうです。

さて、昨年末から謳われていた「パナマ、スエズの2大運河同時危機」ですが、世界情勢によって変わるスエズ運河と違い、パナマ運河については天候の問題なので今後の予想は比較的容易です。

この1年間の通航制限については、今後も同じような流れになることが十分に考えられます。そう考えると、パナマ運河を利用するなら雨季である「6月から10月」あたりが比較的スムーズです。定期的な販路がある場合は、その時期を意識した輸送計画を立てるのがベストでしょう。

太平洋と大西洋を結ぶ物流の要であるパナマ運河。今後も水不足が続くようなら、海水の利用など大規模な設備改修が検討されるかもしれません。今後も定期的にレポートしていきます。