パナマ運河の通航船舶数削減が与える影響を考察

パナマ運河の船舶数制限を発表 2024.1.17

昨年から深刻な水不足が続いているパナマ運河ですが、2024年1月17日にパナマ政府が干ばつによる水不足でパナマ運河の1日の通行船舶を36%削減(約38隻から24隻)すると発表しました。 パナマ運河はガトゥン湖から太平洋、大西洋の海へと流れる水路を水門で区切ることで水位を調整し、船舶を通航させる運河です。そのため、水源であるガトゥン湖が水不足となると通行制限せざるを得ない状況のようです。 (「そもそも海水を使えばいいのでは?」と思われるかもしれませんが、現状では運河の設備の故障リスクがあるため、海水で水位を調整することはできないようです。)

もともとパナマは1月から4月くらいまでが乾期で降水量が少ないため、今回の通行船舶の削減が解除されるのは5月くらいではないかと考えられます。

その結果、懸念されるのは物流の停滞です。通常、パナマ運河の両端の入り口では停船時間が長く、多い時には200隻以上が停船していると言われていますが、今回の発表で停船期間がさらに伸びそうです。

もちろん代替手段として、一旦コンテナを降ろし、対岸まで鉄道輸送の手段をとることもできますが、その際の輸送コストがさらに増えそうです。

コロン港等、主要港の年間コンテナ取扱量について

近年、パナマ運河の拡張によってコロン港とバルボア港のコンテナ取扱量は躍進を遂げましたが、今後も水不足による通行制限が続くようであれば、コンテナ取扱量が近隣港へ流れる可能性もありそうです。

以下は現状発表されている2021年までの年間コンテナ取扱量の推移です。
※データは日本湾岸協会のHPから参照

    

このグラフは2021年までのデータなので、パナマ運河の両端にあるコロン港、バルボア港共に堅調にコンテナ取扱量を伸ばしていますが、今回の水不足で2023年のコンテナ取扱量は減少していると予想されます。

(ちなみにパナマ全体でのコンテナ取扱量は2022年は2021年と比べて微減。さらに2023年10月までは2022年と比べて減少傾向にあるとパナマ海事庁が発表しています)

今後パナマ運河は海水での水位調整をする改修を検討するのか、それともエルニーニョ現象が過ぎるのを待つのか、、いずれにしても今年の乾期が終わるまではこの混乱は続きそうです。

パナマ運河のコンテナ取扱量はデータが発表され次第またレポートします。