南北国際輸送回廊の完成で欧州、インド、中東の物流が変わる!?

ラシュト〜アスタラ間の鉄道合意で南北国際輸送回廊の完成間近?

2023年5月に、イランとロシア間でラシュトからアスタラまでの鉄道建設に関する合意が発表されました。この鉄道は、イラン北部の都市ラシュトとアゼルバイジャンのアスタラを結ぶもので、全長162kmです。
この鉄道の完成により、ペルシャ湾からロシアのモスクワまでの鉄道輸送が実現する見通しです。

この鉄道合意で注目されるのは、インドとロシアを結ぶ南北国際輸送回廊の構想です。今回発表されたラシュトからアスタラまでの区間が、南北国際輸送回廊の未整備だった部分であり、この鉄道が開通すれば、回廊全体がいよいよ完成するとされています。

今回は南北国際輸送回廊について特集します。

南北国際輸送回廊完成で変わる世界の物流

南北国際輸送回廊とは2002年から計画されているインドのムンバイとロシアのモスクワを結ぶ全長7200kmの複合輸送網(道路、鉄道、海路の複合)のプロジェクトです。
このルートはインド、イラン、アゼルバイジャン、ロシアの4カ国にまたがる輸送ルートになります。

主な経由都市とおおまかな輸送ルートは以下の図になります。

今回のラシュト~アスタラ間の鉄道の建設で、上記のバンダレ・アンザリーとバクー間が鉄道で結ばれることになり、モスクワからペルシャ湾まで貨物列車輸送が可能になり、そこからは海路でムンバイまで輸送できるようになるとされています。

従来のムンバイからモスクワへの輸送にはロッテルダムを経由する海上ルート(上図の青色のルート)で、おおよそ6週間程度かかりましたが、国際輸送回廊(上図の赤色のルート)が機能すれば3週間程度に短縮され、輸送費も軽減されるという試算も出ているようです。

この輸送回廊が完成すれば、ロシアとインドだけでなく、近隣諸国にも大きな恩恵をもたらすとされています。イランやサウジアラビアなどの中東諸国がBRICSに加盟したのも、こうしたロシアとインド間の新たな物流網に期待している部分もあるでしょう。

2002年の計画発表から20年以上たった南北国際輸送回廊。果たしていつ完成し、実用化するのでしょうか?
今後も南北国際輸送回廊のニュースに注目していきます。