国際南北輸送回廊(INSTC)はどうなった?
南北輸送回廊はいつ頃正式運用されるのでしょうか?
2023年5月に、イランとロシア間でラシュトからアスタラまでの鉄道建設に関する合意が発表され、国際南北輸送回廊(INSTC)の開通が注目されました。その後1年が経過し、現在の進捗はどうなっているのでしょうか?
結論から言えば、南北輸送回廊の構想が最初に発表されてから20年以上が経過していますが、未だ完成時期等の発表はされていないようです。
今回は今年ニュースになった国際南北輸送回廊に関する出来事についてまとめます。
チャーバハール港を南北輸送回廊の新たな経由港として採用!?
昨年の5月はラシュトからアスタラ間というイランの北側のルートに関する合意でしたが、2024年5月にはイランの港湾海事局(PMO)とインド港湾グローバル会社(IPGL)の間で、南北輸送回廊のルート上と考えられるチャーバハール港の運営・開発に関する合意が発表されました。この合意によってIPGLによる10年間の運営権取得と1億2000万ドルの投資、2億5000万ドルの融資がされるとされています。
チャーバハール港は、イランとアフガニスタンの国境近くに位置する深水港で、2016年には、イラン、インド、アフガニスタンの3カ国間でチャーバハール港の整備に関する合意も行われており、チャーバハール港は南北輸送回廊の重要な経由港になると予想されます。
以下は国際南北輸送回廊で構想されている経由都市(港)の図です。
もともと構想されていたルートはインドのムンバイ港とイランのアッバース港の海上ルートでしたが、ホルムズ海峡の外側にあるチャーバハール港を使うことで、よりスムーズなピストン輸送が可能になると見られます。
なお、インドから欧州への輸送に関してはインドから海路でUAE、そこから陸路でサウジアラビア、ヨルダン、イスラエルを経由して欧州へ輸送する「インド・中東・欧州経済回廊」の構想が2023年の9月に発表されており、こちらはインド、サウジアラビア、UAE、アメリカを含むG20のパートナーで進められていく模様です。
(ただ、こちらはイスラエル紛争が落ち着くまで進まない可能性も)
インド・イラン・ロシア経由で欧州に輸送する「南北輸送回廊」か、それとも、アメリカが進めるイランを経由しない「インド・中東・欧州経済回廊」が先に動き出すのか。
どちらにしてもスエズ運河を使わないルートが確立すれば、国際物流は大きく変わりそうです。
今後も南北輸送回廊の進捗については定期的に取り上げます。
※インド・中東・欧州経済回廊についても経由都市等が分かり次第別途特集します。